hansuu

くだらない生活と脳みそ

カイシンノイチゲキ

前職の仲の良い先輩から連絡が来た。お互いに、人と連絡を頻繁に取り合うような人間ではないため、夏にしていただいた送別会ぶりの連絡だった。仕事の合間に進めていた自邸がようやく竣工したらしい。写真を添えて送ってくださった。はじめて見るはずなのにどこか懐かしさのあるソレに、何とも言葉では表現し難い気持ちになって、自分が好きだった職場のことを思い出した。先輩の描く図面を誰よりもたくさん見てきた自分だからこそ、懐かしさが込み上げてくるのだろう、と思った。

何よりも"自分は建築が好きだった"。改めて自分にはソレしかないんだな、と再確認が出来て少しだけ安心した。ぬるま湯に浸かっている今の生活に慣れてしまったら、もうあそこへ自分は戻れないのではないかと少しだけ恐怖を抱いていたからだった。

前職に就く前も、辞めてしまった後も、自分の理想を実現できるような場所で働きたい、とずっと思っていた。でも、自分の理想はまだまだ薄く滲んでいて、自分自身が迷子になってしまっている状態だ。ぼやけたソレがハッキリした輪郭を象るまで、永遠の修行になるのだろう。死ぬまで修行かもしれない。それでもいい、今はやりたいと思える。きっと、やり続けられる。根拠の無い自信だけは、ある。精神的にも、身体的にも、過酷な仕事だと分かっていても、やっぱり戻りたいと思ってしまうのだから。

 

先輩からの不意の連絡のおかげさまで、自分の中に眠っていた強い意志を呼び起こすことが出来たのが何よりも嬉しかった。自分らしさを取り戻したような、自分が生まれ変わったような気さえするのだ。